造形作家・丸尾結子と映像作家の水尻自子さんは女子美術大学時代の同期。2017年最新作”PULSE”を制作中のアトリエに水尻さんをお招きして、最近のこと、作品のとこなどあれこれお喋りしました。
水尻自子 | Yoriko Mizushiri
手描きアニメを中心に制作する映像作家。身体の一部や寿司などをモチーフにした感触的なアニメーションが得意。近年は主に短編作品を制作し、国内外の数々のフェスティバルで上映・受賞している。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞、広島国際アニメーションフェスティバル 木下蓮三賞、ベルリン国際映画祭短編コンペ正式出品など。
http://www.imoredy.com/
丸尾結子 | Yuco Maruo
造形作家。やわらかな生命感や、 少しねじれたり絡まったりしたような感情を漂わせる「いきもの」的造形やその世界観を創り続けている。石粉粘土を主な素材にした白くふんわりとした質感の作品を数多く発表している。音楽、サウンドや空間、料理、ジュエリーなどいろいろなジャンルやメディア、アイテムとのコラボレーションによる作品展示など意欲的な活動を展開。
http://yucomaruo.jp/
丸尾:水尻さんは学生のときからテイストを変えることなくアニメーションを作り続けてるよね。
水尻:でも実は学生の時は作ってなくて、卒業制作で始めたから。そこからのつながりで、映像でやっていくかと思ったら、丸尾さんはいつの間にかアニメーションから造形の方に行っちゃって、あれ?みたいな…っていう。
丸尾:私は学生の時にクレイアニメーションを結構ずっと作っていたので、造形の作品ていうのは作っていなくて…
水尻:まあ、造形といえば造形だけどね。
丸尾:そう、映像の中に登場する生き物とかを作って、で、どういったことが巻き起こるのかというのを全部コンテに書いて、ストーリーを組み上げて。実際にそれを手で動かすみたいな。水尻さんは、作品の内容のテイストも変わらず…
水尻:基本的には変わらず。感覚的というか、感触的な体に関する感じとか触った時の感触とかで。まぁ、学生の時と何も変わっていないかと言ったらそうではないけども、色々私的にはステップアップはしてきているけども、その辺は丸尾さんはどう見てますか? 私の作品って、全部見てるんだっけ?
丸尾:多分、短編とかの作品はほとんど見てる。お仕事のは見てないやつもあるかもしれないけど
水尻:ステップアップしてない?
丸尾:してる!甚だしい!
水尻:してるよね!どうなってる?
丸尾:なんか、違う時空に行くみたいな感じ。時間の流れも、世界も、普段の生活のことっていうのを全く無視して、本来人が持っている感触みたいなのだけに耳を澄ませたみたいな感じの映像って感じがしてすごく心地いい。気持ちいいっていうのが、頭で考えて狙ってやったっていうよりは、もっと超感覚みたいな、感覚をすごい大事にしてるっていう印象。
水尻:それは嬉しい。。
丸尾:それを実際自分で描いて全部作ってるから、そこらへんもたまたま巻き起こったことじゃなくて、全部自分でそうしようと思って最後まで作っているというのがすごいなって。
水尻:構成は大事だなっていうか。学生の時に最初に作ったアニメーションは作るのに精一杯だったっていうのもあるけど、どうやって構成したら作品になるのかみたいなのを先生に言われたのがずっと根底にあって。どういう構成で作ったら一つの面白い作品として成り立つのかは、今もまあ、ずっと考えてやってて。その中でお尻の最初に作ったやつは、ただいろんな動きを並べて、どうにかこうにかまとめました、みたいな感じだったけど、そこからだんだん、何作か作るうちに、こういう感じにしてみようとか、もっと感覚的なことが伝わる構成っていうのを考えながらやってますね。
丸尾:水尻さんの作品ってはっきりしたストーリーがないから、どのくらい時間が経ったかわかんないっていうか、だから止まってる絵をみて感動するのと同じ感じがするっていうか。だからそういう意味では立体とかを見て、おぉっていうのと感じが似てるっていうか。立体のものじゃないけど、時間で表現されてるけど、なんかその中に浸りきってるみたいな。
水尻:それは嬉しいです。なんかゆっくりしたいじゃないっすか。ゆっくりしたいからゆっくりなものを見たいし、柔らかいものはずっと触りたいじゃないですか。だからもう、ゆっくり描きたいしゆっくり見てもらいたいし。だからあんまり内容的に深いことを、こういうメッセージがあるとかいうことは全くなくて、ただそんな感じ。丸尾さんが言った通りというか。感覚的なものを伝えて、ゆっくりして、みたいな。
丸尾:その感覚的なものを伝えたいっていうのは、それを見てこう感じてこうとらえてほしいみたいなとかはあるの?
水尻:全くないっていうわけじゃないけど、これを見てこう感じてほしいっていうのはほぼない。こう感じてほしいってなっちゃうとそれがメッセージ性みたいになっちゃうから。「意味のなさ」をもっと伝えたいというか。感覚的なものって、なんていうか意味がなくても伝わるでしょ? 触ったりとか。それをどうやって感じるかは人それぞれだから、それはもうどうぞみなさんで、みたいな。どれだけその感覚をリアルに、その人の身体に伝わらせるかっていうのを考えてる。
丸尾:そこももうなんか変わってないよね。
水尻:そこを一番軸にしてやってるからかろうじてブレてないかなっていう感じ。
丸尾:私は以前に作った作品とかだと、結構その子の意味があって説明することがいっぱいある。伝えたいこととか共有したいことがすごいいっぱいある、みたいな感じで、多分そこは逆だよね。
水尻:造形的に丸尾さんの最近の作品とか見ると、この曲線とか、なんか私が描く線と通ずるものを感じているというか。なんか触って柔らかそう〜みたいな、触りたい〜っていう感じだけど、私が描いているものはその裏に、あんまり説明するものはないです、っていう感じだけど、丸尾さんに聞くとすごい出てくるから、それが面白いんだよね。
そもそも丸尾さんは、元々アニメーションやってたわけじゃないですか。そっからどうなってこの静止した造形に行ったんですか?
丸尾:きっかけは展示だったんだけど、映像で伝えるよりも、360度見て対面できるもの。映像の世界の中で表現するんじゃなくて、対峙してもらって、そこにいる存在として、感じてもらうみたいなのをやってみたいなって。
水尻:その形を感じてもらうみたいな?
丸尾:とか、この存在感。これ映像で、そういう世界の中ですよって映像作品を見るっていうんじゃなくて、そういう存在、今まで会ったことのない存在に会って、その人の体が感じるというか。
水尻:同じになってる、私と。
丸尾:その人が感動するとか、「わあっ」って思うとか、そういうのをいろんな角度で感じてもらう。人に会うと、この人映像で見てたのと違うみたいな感じがするのと似ていて、実際に自分と同じ空間にいる感覚みたいな。
水尻:で、丸尾さん的には、その中にはこれに対する物語があるはずでしょ?それは伝えたいものなんですか?それとも自分の中だけでいいみたいな?もし展示の時に丸尾さんがいたら教えてくれるけど、それはそれで面白いけど、丸尾さんがいなかったらわかんないじゃないですか。それはどうなんですか?その物語は伝えたいもの?
丸尾:それは、伝えたい。伝えたいし、それを感じて欲しい。できれば。
水尻:そのままみた時に、その物語が…
丸尾:それはかなり難しいんだけど、例えば菩薩像みたいのがあって、すごく美しくて癒される。でもそれには本当は宗教などの色々なストーリーがあって、だからここにこういうのがあってとかになるんだと思うけど、それは知ってても知らなくても、やっぱり何か感じるものがある。
他のものたちとは違う自分のためのもののような感じがするとか、そういう感じが出るといいなとは思っていて。そして、その後ろ側に私が思っていたこととかも色々あるから、それも含めて感じてもらえたら、よりその人にとって、その人だけの関係になるかなとは思っているんだけど。
水尻:なるほど。
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